相続が開始したときには、まずは相続人間で遺産分割協議を行います。但し、四十九日の法要前に遺産分割の話を持ち出す場合、そのことを非常識だと感じたり、憤慨したりする方もいるので、親族と言えども注意が必要です。相続人全員が一堂に集まって話がまとまれば早いでしょうが、現実には全員が集まる必要はありません。

相続財産に何があるかを誰かが文書などでまとめて、相続人全員に確認をしてもらった上、それぞれの希望を相互に把握しながら、取得額を調整していく、といった形で協議が進むのが一般的です。

しかし、そのような協議がそもそも困難な場合や、話し合いを重ねたものの意見の対立が解消されない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。申立先は、相手方となる相続人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

調停手続の基本的な枠組み

遺産分割は、協議でも調停でも、共同相続人全員が当事者となって進める必要があります。
①誰が相続人なのか、②遺産にはどのような財産が含まれるか、③それをどのように分けるか
——これらを順番に整理していくのが手続の骨格です。

調停は、家事事件手続法上の家事調停として進行し、調停委員が当事者双方の間に立って話し合いを整理し、必要に応じて調停官(裁判官)が話し合いの方向性について指示し、あるいは必要な資料を求めるなどして争点を整理し、調停案が提示されることもあります。

申立てに必要な資料

調停を申し立てるには、次のような資料を整える必要があります。

  • 戸籍関係:被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍、相続人となる者の現在戸籍など(事案によっては非常に多数になります。)
  • 遺産目録:各種財産の客観資料をもとに作成します。
  • 不動産資料:登記簿謄本、固定資産税評価額証明書
  • 預貯金資料:残高証明書、入出金明細書
  • 有価証券:取引明細書
  • 相続債務がある場合:消費貸借契約書、請求書など

また、不動産の査定書(評価に関する資料)、不動産を誰かが使用している場合の賃貸借契約書、特別受益や寄与分の主張をする場合はその関係資料なども必要になります。

なお、相続開始前後に被相続人の預金から不自然な出金があり、使途不明金の問題を調停の中で取り扱うかどうかは、早い段階で方針を決めておくことが重要です。

調停のポイント——資料の裏付けと争点整理の順序

調停は「話し合いの場」ですが、第三者である調停委員が正確に状況を把握して整理するには、客観的な資料の裏付けが不可欠です。感情的な主張だけでは調停委員の理解を得ることは難しく、主張を裏付ける資料を丁寧に準備することが結果に直結します。

争点の整理は、次の順序で進めていくのが一般的です。

  1. 相続人の範囲の確定
  2. 遺産の範囲の確定(使途不明金を取り扱うか、債務の控除など遺産分割外の事項をどう整理するかを含む)
  3. 遺産の評価額の確定(不動産の評価方法についての合意形成など)
  4. 特別受益・寄与分などの主張
  5. 分割方法の検討

最初から結論を急ぐのではなく、調停委員の理解を積み重ねながら争点を一つずつ固めていく姿勢が重要です。

不成立・審判移行に備えた準備

調停は、互いの譲歩が難しい状態になると「不成立」となり、審判に移行します。審判では、裁判所が一定の基準に基づいて分割方法を決定するため、調停段階から審判を見据えた主張・立証の準備をしておくことが大切です。

遺産分割審判手続の流れとポイントはこちら

弁護士への相談について

遺産分割調停では、資料収集・争点整理・調停委員への説明・審判への移行準備を、一貫して対応することが求められます。当事者だけで対応することも不可能ではありませんが、相手方に弁護士がついている場合には、特に早めの対応をお勧めします。

なお、被相続人が遺言書を残していた場合、調停手続の前提として遺言の有効性が問題になることがあります。遺言書の作成段階での法的な設計については、遺言書作成のページもご参照ください。

遺産分割についてお悩みの方は、弁護士法人本江法律事務所の遺産分割ページをご覧ください。