不動産は、多くの相続において最も価値の大きな財産です。遺産分割協議や調停・審判の際、不動産をいくらで評価するかによって、各相続人の取り分が大きく変わります。

遺産分割の協議・調停においては、当事者間で合意が成立する限り、評価額を自由に定めることができます。問題となるのは、当事者間の合意が容易に成立しないときに、どのような評価が適正なのか、ということです。以下、不動産の評価方法について整理します。

遺産分割における評価の基準時

まず、不動産の評価の基準時(いつの時点の価値を基準にするか)について確認します。

実務的には、遺産分割の時(協議や調停の成立時、審判の場合には審判時。)を基準に評価するのが原則とされています。これは、民法906条が「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」と定めており、判例上も遺産分割時の時価が基準とされています。

不動産の評価方法の種類

不動産の評価には、主に以下の方法があります。

(1)固定資産税評価額

固定資産税評価額は、市町村が課税目的で3年ごとに評価替えを行う評価額です。一般的に時価の7割程度とされていますが、地域によって差があります。評価が明確で簡便に参照できる反面、実際の市場価格とのズレが生じやすいため、遺産分割においては、それほど不動産の価格についてお互いに関心がない場合に採用される評価額と思われます。

(2)相続税評価額

相続税評価額は、国税庁により毎年公表される路線価を基準として計算され、路線価が定められていない土地については固定資産税評価額に一定の倍率をかけて計算される評価額です。一般的には実勢価格の8割程度を目安としているとされていますが、税理士が計算して相続税申告書に記載されること、固定資産税評価額よりも時価に近いとされることなどから、固定資産税評価額で合意できない当事者間でも採用される可能性があります。

(3)時価(実勢価格)

一般的には、不動産の遺産分割においては、時価(実際の市場価格)が最も公正な評価方法とされます。時価の把握方法としては、①複数の不動産業者から査定書を取得して、これを平均する方法や、②不動産鑑定士により鑑定評価書を作成してもらう方法があります。

(4)裁判所による鑑定評価

当事者間で価格についての合意が得られない場合、家庭裁判所が主導して不動産鑑定士による鑑定を命ずることがあります(家事事件手続法64条)。この鑑定評価は、当事者の一方が主導する場合と比べて、公正な第三者によるものとして証拠力が高く、審判においても鑑定結果が採用されることが多いです。

評価をめぐる実務上の注意点

遺産分割協議の段階では、当事者が合意できる評価方法であれば、固定資産税評価額でも路線価でも、合意に基づいて評価することが可能です。ただし、不動産の価値が高い場合や当事者間で評価に争いがある場合は、不動産鑑定士による鑑定評価を取得することが紛争解決の近道となります。

また、更地と建物付き土地では評価が異なり、さらに借地権や賃貸借契約が設定されている場合には「貸宅地」「貸家建付地」として評価減の対象となります。このような権利関係が複雑な不動産の評価は専門的な判断を要します。

不動産の評価が争点となっている場合は、弁護士に相談しながら、鑑定の要否を含めて適切な方針を検討することをお勧めします。

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