相続債務はどう整理・分担するのか|遺産分割との関係を解説
相続では、預貯金や不動産などのプラス財産だけでなく、借入金、未払金、保証債務などのマイナス財産も問題になります。もっとも、相続債務は、遺産分割で自由に割り振ればそれで終わるものではありません。誰が債権者に対して責任を負うのかという対外的な問題と、相続人間で最終的にどのように負担を調整するのかという内部的な問題を分けて考える必要があります。
原則として、相続分に対応して分割が可能な可分債務(金銭債務は基本的にはこちらです。)であれば、相続開始により当然に分割して承継されることになります。そのため、例えば相続人間で「この借金は長男が引き受ける」と合意しても、当然に債権者との関係でそのとおりになるわけではありません。当事者間での債務引受としては有効と言えますが、債権者の承諾や別途の契約がなければ、債権者に対しては法定相続分等に応じた責任が残ると考えられます。
もっとも、最高裁(平成21年3月24日)は、相続人の1人に遺産を全て相続させる旨の遺言によって、相続分の全部がその相続人に指定された場合には、その相続人に相続債務も全て相続させるという趣旨と解釈すべきであると判示しました(その結果、遺留分の侵害額を算定する際に、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されない、としました。)。
他方、分割ができない不可分債務(物の引渡の債務など)の場合には、相続人の全員が共有する形で承継することとなり、やはり遺産分割の対象にはなりません。
しかし、相続債務が遺産分割の対象にならないからと言って、相続人間の協議の対象から外してよい、というわけではありません。遺産分割の際に調整することが実務的には求められます。そこで、相続債務の問題では、まず債務の内容を確認し、それが相続の対象となる債務か、保証関係はどうか、債権者との関係で何が必要かを整理することが重要です。遺産分割協議だけで解決できる部分と、債権者との交渉や手続が必要な部分を見分けることが、後の紛争を防ぐうえで大切です。
