相続放棄後に債権者から請求が来たらどうするか|対応方法を福岡の弁護士が解説
家庭裁判所で相続放棄の申述が受理された後に、被相続人の債権者から「借金を返してほしい」という連絡が来ることがあります。相続放棄が受理されたのに請求を受けて、困惑される方は少なくありません。しかし、これは珍しいことではなく、対応を誤ると思わぬトラブルに発展することがあります。
相続放棄をすれば被相続人が負っていた債務を引き継がなくてもいいということは、間違いありません。ただし、債権者が放棄の事実を知らないまま請求してくるケースや、放棄後も一定の義務が残るケースがあります。本記事では、放棄後に債権者から連絡が来た場合の対応と注意点を整理します。
債権者が放棄を知らずに請求してくる場合
相続放棄が受理されても、家庭裁判所から債権者に通知が届くわけではありません。そのため、債権者は被相続人が死亡したことを把握していても、相続人が放棄したかどうかを知るためには、一定の調査の手続を踏む必要があります。そのような調査をせずにいる債権者は、相続人が債務を相続しているはずと認識して、請求を続けることがあります。
この場合の対応としては、相続放棄申述受理通知書または相続放棄申述受理証明書を債権者に提示し、放棄の事実を証明することにより、債権者に自分に対する請求ができないことを認識してもらうことになります。相続放棄申述の受理「通知書」は放棄が受理された際に家庭裁判所から送付されるもので、受理「証明書」は、その後に家庭裁判所に申請して取得する書類で、債権者への提示に使いやすい形式になっています。
このような書面を送付した後も請求が続く場合や、債権者の対応に問題がある場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
相続放棄後も残る「管理義務」に注意
相続放棄をしても、一定の場合には相続財産の管理義務が残ることがあります。2023年の民法改正により、この点が明確化されました。
改正後の民法940条は、相続放棄をした者は、放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有している場合、相続人や相続財産清算人に対して財産を引き渡すまでの間、自己の財産における場合と同一の注意をもって財産を保存しなければならないと定めています。
つまり、たとえば被相続人の自宅に住んでいた、あるいは実家の管理を任されていたという相続人が放棄をした場合、放棄後も引渡しが完了するまでは相続不動産などについて一定の管理責任を負う可能性があり、その管理責任に基づき発生した債務については、負担しなければならない場合があります。相続放棄すれば全てから解放されるという理解は、この点において正確ではありません。
相続放棄後に財産に手をつけてはいけない
相続放棄が受理された後も、被相続人の財産を無断で処分・消費することは基本的に避けなければなりません。放棄の前後を問わず、相続財産を処分する行為は「単純承認」とみなされるリスクがあり、放棄が無効になる可能性があります。
たとえば、相続放棄後に「どうせ誰も使わないから」と被相続人の家財道具を売却したり、預金を引き出したりする行為は、将来的に問題になり得ます。遺品整理についても、通常の範囲を超えた処分は慎重に行う必要があります。不明な点がある場合は、行動する前に弁護士に確認することをお勧めします。
次順位の相続人への影響
相続放棄をすると、放棄した相続人は最初から相続人でなかったものとみなされるため、次順位の相続人に相続権が移ります。たとえば、子が全員放棄すると親(直系尊属)が相続人になり、親もいなければ兄弟姉妹が相続人になります。
このことを知らずに放棄した結果、高齢の親や疎遠な兄弟姉妹が、突然債権者から請求を受けるというケースがあります。自分だけが放棄すれば済むと考えていると、親族関係に予期しない影響が出ることがあります。放棄を検討する際には、次順位の相続人への影響も含めて全体を見渡した判断が重要です。
弁護士への相談について
相続放棄後に債権者から請求が来た場合、まず受理証明書を取得して債権者に提示することが基本的な対応です。それでも請求が続く場合や、管理義務・次順位への影響など個別の問題が絡む場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
相続放棄の手続・期限・単純承認のリスクについては、相続放棄のページで詳しく解説しています。放棄を検討している段階から、早めにご相談ください。
また、相続放棄と限定承認の違いについては相続放棄と限定承認はどう違うかもあわせてご覧ください。
