遺産分割調停が不成立となった場合、調停申立てのときに遺産分割の審判申立てがあったとみなされ、事件は遺産分割審判に移行します。

審判は、家庭裁判所が民法906条に基づき、「遺産の種類・性質、各相続人の年齢・職業・心身の状態・生活状況その他一切の事情を考慮して、分割方法を決定する」手続です。調停が当事者間の合意を目指す手続であるのに対し、審判は裁判所が判断を示すという点で、性格が大きく異なります。

なお、調停を経ずに審判を直接申し立てる場合の管轄は、相続開始地の家庭裁判所です。調停の場合(相手方の住所地管轄)とは異なる点に注意が必要です。

審判手続の進め方

審判では、当事者それぞれが主張と裁判資料を自ら提出することが求められます。家事事件手続法上、各当事者には主張・資料提出の機会と、相手方への反論機会が保障されています。
手続は基本的に「審問」の期日において、当事者が口頭で陳述する形で進みますが、通常は、主張したいことを予め書面に記載して提出します。

調停で提出した資料は、自動的に審判資料にはならない

重要な実務上の注意点として、裁判所は、審判に先立ち行われた調停手続の中で提出された書面等を自ら取捨選択して事実の調査を行うことができますが(家事法70条)、調停で提出されていた資料が、当然に審判の資料になるわけではありません。

どの資料が審判に採用されているかが不明な場合には、審判事件の記録閲覧・謄写手続(家事法47条)を通じて確認することが必要です。
ややテクニカルな話ではありますが、調停から審判に移行した段階で、あらためて必要な資料を提出し直すという意識を持っておくことが重要です。

審判で判断される主な争点

審判手続においても、次のような点が具体的に判断されます。

  • 何が遺産に含まれるか(遺産の範囲)
  • 各遺産をいくらで評価するか(評価額の確定)
  • 特別受益・寄与分をどう扱うか
  • 不動産を誰が取得するか
  • 代償分割を採用する場合、代償金を支払う能力があるか

調停と異なり、裁判所が事実関係や金額評価について判断を示し、判断の理由も記載されます。
そのため、裁判所を説得するための書面の組み立てと、客観的な裏付け資料の提出が結果を左右します。

審判における実務上のポイント

裁判所が重視するのは、当事者の希望よりも「客観的な状態」です。

たとえば、特定の相続人が不動産の取得を希望していても、代償金の支払能力がなく、かつその不動産を現に利用しているといった事情もない場合、裁判所がその相続人への不動産取得を軸に分割を決定することは難しくなります。「こうしたい」という希望だけでなく、それを裏付ける客観的な事情と資料を用意することが、審判段階では特に重要です。

調停の段階から審判を見据えて主張・立証を準備しておくことが、最終的な結果に影響します。

弁護士への相談について

遺産分割審判は、調停よりも法的な主張・立証の比重が高くなります。相手方に弁護士がついている場合はもちろん、審判移行が見込まれる段階では、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

また、調停手続の流れについては遺産分割調停手続の流れとポイントもあわせてご覧ください。

遺産分割の調停・審判についてお悩みの方は、弁護士法人本江法律事務所の遺産分割ページをご覧ください。